在日アフリカ人として生きて  ~異文化理解のメッセンジャー~

ダウンロード
7月18日 アフリカ分科会 ジョゼフ・ンコシ.pdf
Adobe Acrobat ドキュメント 118.6 KB

在日アフリカ人として生きて

~異文化理解のメッセンジャー~

(ワークショップ・音楽ライブへの誘い)

 

日本平和学会2015年度春季研究大会

アフリカ分科会 レジュメ

 

はじめに

 ジョゼフ・ンコシ(Joseph Nkosi)氏を報告者に迎え、「在日アフリカ人として生きて~異文化理解のメッセンジャー」のタイトルで、進行の藤本義彦、討論の佐竹純子、そして参加者が共同で作り上げるセッションを目指す。報告者は南アフリカ共和国出身のマリンバ奏者で、関西在住である。

 さて、産経新聞に掲載された曽野綾子のコラムが大きな議論を呼んだことは記憶に新しい。「外国人を理解するために、居住を共にするということは至難の業だ」、「もう2030年も前に南アフリカ共和国の実情を知って以来、私は、居住区だけは、白人、アジア人、黒人というふうに分けて住む方がいい、と思うようになった」などと主張する曽野に対して、アフリカ研究者を含む様々なレベルで抗議が広がった。本セッションでも、このコラムを批判的に振り返ることになるだろう。

 報告者の音楽活動は、アパルトヘイトの時代が終わり、マンデラ政権が誕生する時期に本格的に始まった。南アフリカ屈指のマリンバ奏者として活躍、マリンババンドの演奏で世界各地に遠征した。1996年の来日の際には30の都道府県を巡った。その後もミュージカルで演奏に加わりヨーロッパ公演に参加するなど、広範囲な演奏活動を送っていた。

 2000年代前半にはそうした活動を離れ、日本に移り住み、異なる環境での音楽活動を行なうようになった。そんな日本での活動が報告の中心となる。以下は活動の流れであるが、当日の報告や討論は、必ずしもこれに縛られない。なお、報告者の使用言語は英語である。

 

1.「西成」からのスタート

 十数年前、わずかな着替えとマリンバ製作用の木材を入れた荷物をかかえて日本に移り住んだ。最初に生活したのは大阪市西成区だった。まだ日本語もほとんど話せないのに、マリンバ用の材料を求めて歩き回ったり、買い物をしたりして、近所の人びとと言葉を交わした。西成という地域の人々に温かく迎えられた経験が、日本での生活の出発点になっている。

 

2.楽器が1台から2台へ

 やがて日本での1台目のマリンバを完成させ、アーティストとしての活動の準備を進めていった。最初は1台だけのソロ演奏だった。足を使って演奏できる伴奏用のパーカッション類も加えた。その後、2台目のマリンバを完成させた。二人で演奏するスタイルが生まれたのである。ベースマリンバが入ることで音楽が深まり、広がった。

 一方、2003年に国立民族博物館で開催された特別展「西アフリカ 地球おはなし村」にかかわり、楽器の演奏とともに指導を行なうようにもなった。

 

3.異文化理解のメッセンジャー

 この十年余りの間に、マリンバにパーカッションと歌や踊りを織り交ぜて行なう演奏スタイルを基本にして、ライブハウスや各地のイベントやフェスティバルへの出演の機会がふえていった。沖縄音楽、津軽三味線、和太鼓とのコラボからジャズ奏者との共演まで、音楽を通しての異文化交流も積極的に行なってきた。

 幼稚園から大学校での演奏やワークショップを依頼されたり、国際理解教育や人権教育という視点からトークを求められたりすることも多い。南アフリカのアートを題材にワークショップを実施することもある。最近では、フォークデュオ「ゆず」の”Olla!!”にマリンバの演奏で参加し、ミュージックビデオにも出演している。今春公開された子ども向け映画の主題歌である。「異文化理解のメッセンジャー」の活動は多様化している。

 

おわりに

 日本はヘイトスピーチが公然と行なわれ、前述のコラムに限らず、弱者に対して差別的な傾向のある社会である。報告者は、そんな差別的な側面を、学術的に研究して批判したり、活動家として抗議したりするのではない。音楽を通して異文化理解や人と人のつながりが大切であることを伝えるのである。さらに、異なる文化的背景をもつ人びとが平和に共生できる社会の可能性を示しているとも言える。

 報告に続いて分科会参加者との討論の時間をもつ。そして最後に、報告者の音楽の魅力をアクティブに体験できるイベントの案内を行なう。本セッションに「ワークショップ・音楽ライブへの誘い」という位置づけを与えているのはそのためである。

 

参考文献等

Nkosi Africa : ジョゼフ・ンコシ 公式サイト」http://nkosiafrica.com/ 2015525日入手

曽野綾子「労働力不足と移民」(連載コラム「透明な歳月の光」)、2015211日、産経新聞朝刊

ゆず「OLA!!」(CDシングル、ゆず盤、映画「クレヨンしんちゃん オラの引越し物語 ~サボテン大襲撃~」主題歌)、2015