琉球独立論と中国・台湾

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日本平和学会2016年度秋季研究集会

報告レジュメ2016年10月

琉球独立論と中国・台湾

龍谷大学(経済学部松島泰勝)

 

キーワード:琉球独立論、中国脅威論、台湾独立論、東アジアの平和

1現在の琉球独立論の特徴

*琉球救国運動時代:朝貢冊封体制の継続を求めた併合阻止運動、復国運動。郭嵩壽(1818〜1891、福建按察使、駐英・英・仏公使)の琉球自立・独立論(朝貢免除し自立国にし、その独立を国際的に保障する)。植木枝盛(「琉球ノ独立セシム可キヲ論ス」)

*戦後初期の独立運動:『琉球経済―琉球帰属論』第10号、1951年

仲宗根源和(共和党):独立後、土地を米国に貸し、基地として利用させる。新里銀三(共和党):独立後、親日、親米の平和愛好国として自由諸国への仲間入りをする。しかし米国は基地を撤退させないだろう。それにより経済援助も期待できる。大宜味朝徳(社会党):米国の信託統治領へ。池宮城秀意(うるま新報社長):日本への不信(植民地的扱いをされた記憶)

反日本帰属論(米国帰属、信託統治領)としての独立論、日本帰属論としての日本復帰論。

その後、米軍基地が拡大し、人権問題が深刻化。平和憲法による基地の撤去・縮小、高度経済成長の日本への期待等で日本復帰運動が活発化。中華民国政府の支援を得て、喜友名嗣正が独立運動。琉球併合、「復帰」に反対する中華民国政府。

*大国への帰属を前提とせず、国際法の人民(民族)の自己決定権に基づく独立論が、現在の琉球独立論の特徴。日本の一部でなければ、米国、中国のそれでもなく、大国に依存しない、自己決定権という集団的人権に基づく独立。

2台湾独立と琉球独立との違い

 戦後、蒋介石による台湾の軍事独裁体制が始まると、それに抵抗する人々が日本や米国等に移住、亡命。反蒋介石、反国民党を掲げて独立運動を展開:「台独」。1972年の日中国交正常化で中華民国(台湾)と日本が断交。1979年の米中国交回復で中華民国と米国が断交。台美軍事協防条約が台湾関係法になり、台湾から米軍基地が撤去。台湾が国際的に孤立し、日米との関係強化を求める政治的主張としての台独。1980年後半頃から、親日米、反中が台独の特徴となり、新興資産階級がその担い手。

 台湾独立を唱えている李登輝は、1991年の中華民国憲法修正以来、中国と台湾との関係は「特殊な国家と国家の関係」であり、すでに独立しており「台湾独立を宣言する必要はない」と主張。(李登輝『新・台湾の主張』2015年PHP研究所 、以下引用も同じ):「独台」。蔡総統、民進党も同じ。

 李登輝の発言:「(2014年7月の集団的自衛権行使容認の閣議決定に対して)安倍首相の決断が東アジアの安定に大きく寄与することは間違いない。台湾にもよい影響をもたらすであろう」「日米同盟は引き続き重要であり、日本の集団的自衛権の行使容認は、両国の関係をいっそう緊密化させていくだろう」「台湾は日本の生命線である」「安倍首相が決断した集団的自衛権の行使容認は、安倍政権の最終目標である憲法改正、ことに第九条の改正への第一歩となるだろう。日本が自立した国家として歩むことは、同時にアジア地域の平和と安定につながる。台湾をはじめとするアジア諸国は「日本の再生」を歓迎し、また期待しているのである」「日本は精神文明の面においても、モラルの面においても、アジアのリーダーになりうる唯一の国であることを忘れてはならない。明治維新を成し遂げた日本は、東西文明の融合地として、いまなお台湾が見習うべき偉大な兄なのである」

 2015年に李は日本外国特派員協会で「尖閣列島は日本のものである」と述べる。李は、日本の集団的自衛権、日米同盟体制、憲法改正を評価し、尖閣諸島の日本領有を認め、日本がアジアの精神的なリーダーになることを期待。李は、武士道精神や日本の台湾植民地支配を賛美し、台湾の人々の靖国神社への合祀を認める。李総統時代から台湾の教科書の右傾化(日本植民地時代の肯定的評価)が進む。李は台湾の民主化だけでなく、同時に台湾の再皇民化(日本の神社の保存・再建)でも大きな影響を与えてきた。

 独台は、台湾の再皇民化を政策的に推進し、日米同盟体制、日本の集団的自衛権を高く評価。在沖米軍基地の存在意義を認める。他方、琉独は日本の植民地支配を批判し、脱植民地化と日米両軍基地の撤去を目指す。琉独が、国際法で保障された人民(民族)の自己決定権に基づいた独立を目指しているが、独台は中国からの離反、日米との政治的、軍事的な連携強化を求める。

 蔡総統は、中国封じ込めの多国間経済協定とも言われるTPPに台湾を加盟させようとする。米国製軍事品購入を増加させ、東南アジア諸国との経済関係を強化する「南方政策」を推し進め、対中経済関係を縮小させようとする。蔡は総統就任後、中国との公式な対話をせず。蔡総統が揮毫した「台湾之塔」。

 2014年の「ひまわり学生運動」から生まれた時代力量も台湾独立を主張。王育徳を中心にして1960年に日本で設立された台湾青年会が基になったのが台湾独立建国連盟。日本、米国、欧州、カナダ、台湾に拠点を置いて独立運動を展開し、「中華民国」から「台湾共和国」への改名を目指す。その他、「台湾民政府」、「大日本帝国政府重建政府」という民間団体も再皇民化、独立運動を展開。

 台湾独立を主張する台湾人が再皇民化を同時に推進し、日本との歴史的、政治的な関係を強化。他方で、靖国神社への合祀に反対する立法院委員で台湾原住民の高金素梅や、日本の植民地支配の問題性や、現在の再皇民化を批判する中華琉球研究学会のような研究者グループも活動。

3中国脅威論と琉球独立論

 日本の戦争責任、琉球侵略・植民地支配に対する無反省・無関心、琉球の日本所属論が脅威論の背景にある。中国脅威論を理由にして琉球の軍事化が正当化・強化。本当に中国は脅威なのか。琉球と中国との独自な関係性(内政干渉のない朝貢冊封関係、クニンダーの存在、共通の歴史や文化)。北京、福建、台湾における琉球の歴史、政治的地位に関する学術会議(主権を有する藩属国としての琉球国、琉球の自己決定権を認める、琉球の政治的地位は未確定)。米中関係、中国と太平洋諸島との関係等、多角的に、客観的に「中国脅威論」を検討すべき。

結論

 東アジアの中で琉球独立を構想し、議論することの重要性。非武装中立を掲げる琉球国の誕生は東アジア共同体の形成を促す。

 

参考文献

『琉球経済―琉球帰属論』第10号、1951年

西里喜行『清末中琉日関係史の研究』京都大学学術出版会、2005年

李登輝『新・台湾の主張』2015年PHP研究所

王育徳・宗像隆幸『新しい台湾』1990年、弘文堂

松島泰勝『琉球独立への道』法律文化社、2012年

松島泰勝『琉球独立論』バジリコ、2013年

松島泰勝『琉球独立』Ryukyu企画、2013年

松島泰勝『琉球独立宣言』講談社文庫、2015年

松島泰勝『琉球独立への経済学』法律文化社、2016年