市民活動の足跡を未来につなぐ――市民活動資料センターの誕生

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日本平和学会2016年度秋季研究大会

ラウンドテーブル「多摩地域発 平和な社会づくりにむけた挑戦」(開催校企画)

 

市民活動の足跡を未来につなぐ――市民活動資料センターの誕生

ネットワーク・市民アーカイブ 運営委員

江頭 晃子

 

1.「市民アーカイブ多摩」

 「市民アーカイブ多摩」は、市民が開設・運営している市民活動資料の図書館です。東京・立川市の北部、玉川上水駅から南方向へ徒歩8分、緑に囲まれた閑静な住宅街の一角にあります。2014年4月に、木造平屋の茶室だった民家を、床はフローリングにしましたが、障子は残すなどの雰囲気を残しながら改装して開館しました。市民団体「ネットワーク・市民アーカイブ」が設立・運営主体です。施設は、緑地保全のNPO法人「グリーンサンクチュアリ悠」の敷地内で、所有者のご厚意により提供していただいています。

 毎週水曜日と第2・4土曜日の午後1時から4時まで開館し、おもに多摩地域の市民団体や個人が発行する会報誌や通信などを集めて、整理・保存し、公開しています。資料をご覧になりたい方は、開館日に自由に来館して利用していただけます。

 

2.東京都が廃棄処分にした資料の保存先を求めて

 「市民アーカイブ多摩」としては3年目ですが、開館までには長い歴史があります。

 始まりは、1972年に東京都教育委員会が立川市内にあった都立社会教育会館の中に開設した「市民活動サービスコーナー(以下、「コーナー」)」に遡ります。同コーナーは市民活動支援事業の中で団体が作成した会報や冊子を収集・整理・公開し、同会館内の「社会教育・市民活動専門資料室」の中で公開していました。集めた市民活動資料は30年間にダンボール約500箱。2003年に東京都はこの資料室を廃止、資料は散逸の危機にあいました。コーナーの元職員や利用者が中心となって発足させたNPO法人「市民活動サポートセンター・アンティ多摩」を中心に、立川市内の団体とネットワークを組み、資料の維持・活用・保存に向けて取り組み、立川市内の公共施設にとりあえず保管され廃棄は免れました。しかし、保管だけでは資料は活きてこず、それらの資料を活用するために資料室を開設させようと、研究者、図書館・文書館関係者、自治体職員、市民活動をしている人、ミニコミ発行者などが集い、2006年「市民活動資料・情報センターをつくる会(以下、「資料センターの会」)を設立し、資料室をつくる運動を始めました。

 資料室開設に向けて、最初はもちろん多摩地域の自治体に働きかけました。廃校になった校舎利用を提案したり、古い児童館施設の活用案をつくったり、新たにできる公共施設の目玉として市民活動資料室を提案したり。しかし、いずれも行政事業を縮小していく中で、資料整理にも手間がかかる市民活動資料の受け入れは実現しませんでした。一つの自治体だけの資料ではなく、多摩地域や東京都内を中心にしながらも全国の市民活動資料もあり、一区市町村での受け入れについては、説得する側としても難しいものがありました。地元企業にも打診しましたが、当然ながら資料は利益を生み出すものではなく、どこも引き取り手はありませんでした。

 

3.自分たちで資料室開設を目指す

 資料センターの会運営委員のメンバーには、民間で市民活動資料を収集・提供し続けた住民図書館(1976~2001年閉鎖、その後埼玉大学を経て立教大学共生社会研究センターへ資料移管)運営にかかわって苦労してきた者もおり、自力による設立については避けたいというのが会の大勢でした。しかし、足踏みしている間にも市民活動資料はどんどん生み出されており、空白期間が長引けば、それだけ資料は散逸していきます。何度も話し合いを重ね、自分たちで資料センターを開設することを決断し、2010年に募金運動を開始しました。広く募金を呼びかける運動は、資料センターの会を広く伝えることにもなり、その過程で法政大学が助成金を得て新たにサステイナビリティ研究機構を立ち上げ、「環境アーカイブズ」として資料収集しているとの情報が入りました。自分たちで開設を目指して運動を始めたものの、500箱を収納する場所を確保するための募金額にはとても届かず、資料のよりよい保存・公開を考えて、2011年12月に500箱のコーナー資料は法政大学に移管(2015年3月に寄贈)しました。サステイナビリティ研究機構は時限的研究機関だったため、現在は同大学大原社会問題研究所の所管となり、多摩キャンパスの「環境アーカイブズ」で丁寧に保存・公開されています。

 こうして1970年代から2002年に収集されたコーナー資料の保存は決まりましたが、2002年以降に収集を続けていた市民活動資料と現在進行形で収集する資料の収集拠点が必要でした。500箱のコーナー資料の保存先は確保されたため、当初の予定より小さなスペースでの開館が可能となり、募金運動で集まったお金で所有者のご厚意により提供していただいた民家を改装し、「市民アーカイブ多摩」は2014年4月に開館しました。開館に合わせて「資料センターをつくる会」は「ネットワーク・市民アーカイブ」に発展・改称しました。

 

4.生活の中から生み出される資料

 「市民アーカイブ多摩」の館内は、閲覧室、書庫、事務スペースがあります。資料としては、団体や個人が発行する通信や会報、チラシやビラ・ポスター、リーフレット等です。通信や会報などをミニ・コミュニケーション・メディア(以下、ミニコミ)と呼び、利用者も入れる書庫に、現在約1400タイトルが並べています。自治、共同体、平和、人権、女性、自然、公害、原発、福祉、子ども、高齢者、教育、消費者、文化・芸術など、約30の分類に分けて配架しています。市民がさまざまに動き、その中での必要性から発行される通信やチラシには、生活の現場や当事者としての視点による情報や知恵や思いが詰まっています。暮らしや社会の問題にぶつかった時、物事に疑問を感じた時、マスコミからは得られない物事の見方や問題解決への筋道が見えてきたり、励ましを得られたりもします。

 個人的にも、生活上で疑問や問題に出会ったときは、全てミニコミに教えてもらってきました。等身大の悩める自分と同じような人が必ずいるのです。ベトナム難民の友人が日本国籍を取らざるを得ない状況になった時、子どもを出産する際の助産院情報、公立保育園で新たに保護者会を上手につくる方法、米軍基地の夜間飛行の騒音に悩まされた時の有効な抗議方法、子どもが学校に行かなくなった時の親としての考え方と対応、3・11後の放射能対策、電磁波問題への対処方法、心の病の相談先と仲間が集う場、マイナンバー提出拒否文書のつくり方…ネットを検索すれば出てくることもありますが、紙媒体として毎号、形として発行される通信の、直接的ではなくても顔の見える関係での信頼度は高く、共に考えることができます。そして時に自分の経験や思いを、それぞれのミニコミに投稿することもできる双方向性の強い民主的なメディアでもあるのです。

 

5.貴重な歴史資料

 東京・多摩地域では現在、二巡目の市史編さん事業が活発になっており、各地の現代の歴史をたどるとき、市民活動資料は欠かせない存在になってきています。これまでも、小平市・八王子市史編さん室が私たちが保存活動をしている資料を市史をまとめるにあたって活用されました。

 戦後70年間の市民の動きは、今現在の社会をつくりあげた大きな力の一つであることは間違いありません。戦後、荒廃した町の中で集い・学び直すことから始まり、平和・民主主義を基調とした新たな社会づくり、公的制度を一緒につくっていく運動、人権確立、開発を優先する民間企業との公害等反対運動、不利益を被りやすい人たちの人権擁護、住民の福祉を優先させるための行政組織への働きかけ、行政・民間組織では出来ない新たな事業体としての市民組織確立、そして現在は憲法改定の現実が迫る中、平和・民主主義社会を求める運動へと回帰しています。市民の活動がさまざまな制度や機能をつくりだし、行政・企業組織とも連携・時に対抗しながらもよりよい社会づくりを実現させてきました。戦後の憲法理念に支えられ、それを現実のものとする「不断の努力」を積み重ねてきたのが市民の活動であり、市民活動資料はそれらを証明する貴重な資料群です。記録が無ければ歴史としても残らず、現在進行形の資料収集と保存は現在を生きる私たちの責任でもあります。

 

6.市民政策・知恵の宝庫

 市民活動資料の収集・提供は、本来であれば、市民の声を聞き、市民の必要を学び、市民の動きを制度に変えていくべく行政が公的事業でやるべき仕事です。小さな市民アーカイブ多摩で、私たちが収集できている市民活動資料は、東京・多摩地域に限定したとしても全体の1%ぐらいのものでしょう。地域の人が集う図書館や公共施設だからこそ収集できる、地域で集められるからこそ地域の人たちに活用される、その地域の市民活動資料(ちらしや通信)などを地域資料として収集・活用するシステムがもっともっと広がって欲しいと思っています。それらの資料は歴史資料としてだけでなく、市民政策の知恵の宝庫としても、自治体にとっては重要な資料でもあるはずです。収集資料の「中立性」を口実に地域資料を行政資料に限定するのではなく、その地域に住む市民が発行している資料は、貴重な地域の情報源として重要視してほしいと思います。

 小さな資料室ですが、ぜひ一度、ご来館いただき市民活動資料に触れていただき、資料収集・整理方法等へのご意見も大歓迎です。また、会員として市民アーカイブを支えてくださる方も募集しています。

◆市民アーカイブ多摩・利用のご案内

・開館日:毎週水曜日、第2・4土曜日(8月中旬・年末年始の休館あり)

・開館時間:午後1時~4時   ※団体見学などは日時応相談

・入館カンパ:100円~ ・所在地:東京都立川市幸町5-96-7 

・電話&fax:042-536-5535(電話は開館中のみ) 

・年会費:正会員6000円、賛助会員3000円(通信や催し案内をお送りします)

・E-mail:simin-siryo@nifty.com  http://www.c-archive.jp/

(初出:公職研『地方自治職員研修』2016年9月号)

 

 

市民アーカイブ所蔵 分類20(平和関連)のミニコミ・タイトル

  • 遊撃
  • 非戦のまち・くにたち
  • 被爆者のお話と映画の集いー被爆体験の記録と感想文集ー
  • ジャキューズ
  • DAYS JAPAN
  • ニュースレター ホロコースト教育資料センター
  • POSTING!
  • 東京大空襲・戦災資料センター ニュース
  • 松代大本営の保存をすすめる会ニュース 保存運動
  • じむきょく通信
  • ABC企画NEWS
  • なずな
  • (くにたち駅前反戦)ビラ
  • 市民平和基金通信
  • 非戦
  • Let's
  • ねがい新聞
  • 月刊 ピースネットニュース
  • PUNCH! -反天皇制運動-
  • 東京に平和祈念館(仮称)を
  • 辻つじ反戦ながし瓦版
  • 戦争と性
  • 横浜・緑区米軍機墜落事故平和資料センターかわら版(旧:平和資料センターニュース)
  • 東北アジア情報センター
  • ぴーす・ぴあ
  • テント村通信
  • こころを育むために -ホロコースト教育資料センター ニュースレター-
  • Peaceあさかわ -浅川地下壕の保存をすすめる会ニュース-
  • 「コスタリカに学ぶ会」つうしん(コスタリカ通信)
  • 風 -戦時性的強制被害者問題をめぐる-
  • かながわ平和通信
  • 平和新聞
  • 新月新聞 ―息をのむ美しい森からの便り― OKINAWA TAKAE
  • 兵士の声・家族の声
  • 怒りの大集会 報告集
  • 反戦の輪
  • 福音周報
  • 平和文化
  • 国民学校一年生の会ニュース
  • 草の家だより
  • 市民の意見(旧 市民の意見30の会・東京ニュース)
  • imagine
  • ヴァンテアン通信
  • グラスルーツ
  • 百万人署名運動全国通信
  • 社会委員会だより
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