2023年 秋季研究集会プログラム

 

大会テーマ「私たちが戦争を「絶対に」しないための平和学ーこれからの100年のためにー

 

 2023年 11月25日(土)・26日(日)

会場:早稲田大学(*ハイブリッド開催)


(フルペーパーは大会終了後、1~2週間ほど掲載されます)


 開催趣旨

 

 日本平和学会は今秋に50周年を迎える。そこで本研究集会はこれまでの国際社会を振り返りつつ、日本の平和学が今後進むべき方向を探る場とする。

 日本平和学会は1973年、被爆体験に根差した戦争被害者としての立場から、普遍的な平和研究の制度化を試み、将来日本が再び戦争加害者になるべきではないという価値にもとづいた平和研究を発展させようとした研究者たちによって設立された。その後、本学会は国際秩序を揺るがす冷戦の崩壊や地域紛争、9.11を契機とした「テロ」の問題のみならず、グローバル経済の拡大に伴う貧困・格差、気候変動や環境破壊、3.11の東日本大震災後の原発問題をとりあげ、それらの根底にある直接的・構造的暴力をもたらす抑圧的な構造を捉え、社会に積極的平和を実現するために、研究者として教育者として、そして実践者として模索してきた。

 しかしながら、この平和学会50周年という記念すべき2023年、世界終末時計は残り90秒となった。ロシア・ウクライナ戦争が終結する兆しは見られず、世界戦争勃発と核兵器使用の可能性は人類にとって最大の危機である。日本は「戦争はしない、戦争にかかわることに加担しない、加害者には決してならない」という価値とは正反対に軍事化を加速させている。また、各地での武力戦争や政治的弾圧に加えて、多くの人は未曽有の規模の台風などの異常気象のために家や生活手段を失い、住み慣れている地域から逃れることを余儀なくされている。新自由主義的な経済政策は先進国の中にも貧困や格差を広げ、そのしわ寄せは女性や移民、非正規滞在者だけでなく、男性の労働の規制緩和にも及ぶ一方で、世界各地で女性や多様なセクシュアリティの人々の社会進出に対するバックラッシュも一段と厳しくなっている。そして、戦争を繰り返さないためにはその記憶を風化させてはならないが、日本においても世界においても、戦争や弾圧、抑圧された民の記憶を伝える平和博物館が存在に係る危機に直面している。

 以上のような状況を鑑みて、日本の平和学はどこへ向かって進むべきだろうか。本研究集会では交差する三つの軸に沿って考えることにした。まず、反戦・人権主義の立場から、21世紀の戦争をふりかえりつつ、法の支配や人道的介入などの矛盾や問題点を明らかにする。そして、「グローバルサウス」という構造的暴力をジェンダーの視点から問い直す。最後に、「記憶と発信」とし、市民に平和を考える場としての平和博物館と連帯するために、平和博物館が直面している課題や取り組みを共有する。それぞれの軸に沿ってしっかり議論しつつ、それらが交差する状況を浮き彫りにしながら、これからの平和学の形を提案したい。

 

                             開催校理事 堀 芳枝

                                        第25期企画委員長 アレキサンダー・ロニー 

 

 

11月25日(土) 

9:00-11:00 部会1:自由論題

(部会責任者 斎藤小百合 恵泉女学園大学)

会場:14号館 101

 

報告:北村浩「コンテンポラリーアートにおける平和の価値の表象をめぐって ―「記憶の政治」、構造的暴力と不正義の言説を軸にしてー」

報告:市川ひろみ(京都女子大学)「ドイツと韓国における兵役拒否運動の広がりと深化」

報告:シン・ヒョンオ(立命館大学)「韓国における良心的拒否制度化の評価と課題―人権的・憲法的観点から」

討論:佐藤壮広(山梨学院大学)

討論:松田哲(京都女子大学)

討論:阿部浩己(明治学院大学)

司会: 斎藤小百合(恵泉女学園大学)

 

9:00-11:00 部会2:「文明と平和」WG/3.11プロジェクト委員会共催

※ラウンドテーブル 3.11から12年での原発回帰を問う

(部会責任者 鴫原敦子 東北大学)

会場:14号館 B101(地下1階)

 

 3.11広域複合過酷災害を経験した日本は、2023年5月、岸田政権のもと原発回帰へと大きく舵を切り、8月には処理汚染水の海洋放出に踏み切った。福島原発事故後、まがりなりにも原発への依存度を減らすとしてきた政府方針は、GX関連法の成立により、原発の「最大限活用」へと向かうことになる。「地球温暖化の防止」を掲げ、原発の利用促進を図ることを「国の責務」に位置付けた原子力基本法の改正をはじめ、最長60年とされてきた原発の運転期間延長、革新軽水炉なる改良型原発建設まで進めるという。

 いったい原発事故の教訓とは何であったのか。原発事故から12年を経て、被災者と国民的議論を置き去りに進められてゆく忘却のポリティクスに抗うために、平和研究には何ができるか。ラウンドテーブル形式で参加者と一緒に考えてみたい。

 

登壇者:七沢潔(ジャーナリスト)

登壇者:宇野朗子(「避難の権利」を求める全国避難者の会)

登壇者:佐々木寛(新潟国際情報大学、「平和と文明」WG主任)

司会:平井朗(ノーモア・被爆者記憶遺産を継承する会) 

 

11:10-12:00 第1回「平和学会で平和学する」カフェ

(カフェ責任者 ロニー・アレキサンダー 第25期企画委員長(神戸大学)ほか)

会場:14号館 4F アクティブラーニングスペース

 

 平和学は学際的で挑戦的な学問分野です。個人間の対立から国や地域における武力紛争や戦争まで、様々ですが、何よりも必要なのは平和です。日本の平和学はその「平和づくり」に積極的に果たす役割があります。では、平和学はどのようなことができるのでしょうか。また、平和学そのものにはどのような意義があり、どのように追及し、研究すれば良いでしょうか。さらに、「私のテーマはこれで良いでしょうか」、「この研究だったら、就職できるでしょうか」も含めて、平和学にまつわる様々なことを自由に話せる場として、第1回目の「『平和学会で平和学する』カフェ」を開催します。飲み物は持参ですが、カフェのようにホッとしながら話してみませんか。

 

12:00-14:00 分科会

 

14:10-14:40 50周年記念を祝しての乾杯と懇談(挨拶 奥本京子会長 内海愛子元会長)

会場:14号館 101

 

14:40-15:50 総会

会場:14号館 101

 

16:00-18:00 部会3:(企画委員会50周年企画) 「軍事力の暴走とその悪循環―人権・法の支配・ジャーナリズムの破壊がもたらすものと平和への教訓」

(部会責任者 申惠丰 青山学院大学)

会場:14号館 101

 

 国連安保理常任理事国のロシアが自らウクライナ侵略戦争を起こした事実は重大である。しかしこれに対しては、単に軍事力強化で対応するのではなく、なぜこのような事態に至ってしまったのかを、冷戦後の国際秩序やロシアの国内情勢(野党政治家やジャーナリストの弾圧、言論統制、法の支配の欠如)から分析し、今後の教訓としていくことが不可欠である。

 国際的な法の支配においても課題は大きい。西側諸国が行ってきた軍事力行使にも、国連を通さず一方的に行われたもの(コソボ空爆、イラク戦争)、一定の目的が標榜されつつ実際はそれを踏み越えて行われたもの(アフガニスタン攻撃、リビア空爆)は枚挙に暇がない。そこでは、偽情報に基づく先制攻撃(イラク)や、NATO諸国による攻撃(コソボ、アフガニスタン、リビア)が行われ、その後は介入国の軍の駐留という流れになってきたが、いずれも深刻な結果(破壊と殺戮、暴力の蔓延、過激派の台頭)をもたらしている。

 ミリタリズム偏重は、無責任な軍事力行使がもたらしてきた結果をみればあまりにも危険である。本部会では、軍事力の暴走を可能にした背景や、軍事力の暴走が悪循環を作ってきた顛末を見つめ、平和な社会を創っていくための建設的な議論につなげたい。

 

報告:石田淳(東京大学)「棲み分けの平和の行方」

報告:栗田禎子(千葉大学)「「対テロ戦争」(アフガニスタン、イラク)にみる欧米諸国の基準とミリタリズムの限界」※オンライン参加 

報告:板橋拓己(東京大学)「NATOの東方拡大とヨーロッパ」

報告:塩川伸明(東京大学名誉教授)「ウクライナ:危機の始まりから本格戦争へ(2014-2022/23)」

司会:申惠丰(青山学院大学)

 

 

11月26日(日)

9:20-11:20 部会4(「気候変動と21世紀の平和」プロジェクト委員会企画)

惑星限界状況下での平和学はいかにして可能か?(部会責任者 前田幸男 創価大学)

会場:14号館 101

 

 「人新世」時代において「惑星限界」を迎えつつある現在、地球という「大地」において平和学と平和の諸実践の双方は、従来の専門分化しがちな学問領域を横断しながら、ノン・ヒューマンとヒトがともにこの「大地」で共生することの必要性や可能性について考え、行動する好機を得ていると言える。
 本企画は、上記のような課題を考える上で、前田 幸男『「人新世」の惑星政治学―ヒトだけを見れば済む時代の終焉』(青土社、2023年)で提示された問題提起を、様々な分野で研究活動を行っている多様な研究者たちによる応答と交錯させることによって、できるかぎり多面的・立体的に理解することを目的としている。本部会では同書の検討を通して、気候変動に代表される惑星限界状況下の平和学の将来を構想し、どのような実践が必要かを模索する上で豊かな刺激と示唆を得ることが期待される。

 

報告:佐藤史郎(東京農業大学)「生きものから見た惑星政治学」

報告:安高啓朗(立命館大学)「国際関係論(IR)からみた惑星政治学」

報告:湯浅正恵(広島市立大学)「社会学からみた惑星政治学」

討論:西海洋志(聖学院大学)

討論:田村あずみ(滋賀大学)

司会:芝崎厚士(駒沢大学)

 

9:20-11:20 部会5:※ラウンドテーブル 「平和博物館の危機を平和学するーこれからの100年を市民と連帯する平和学会をめざして」(部会責任者 和田賢治 武蔵野学院大学)

会場:14号館 102

 

 本部会は、平和博物館の直面する課題や新たな取り組みを共有し、日本平和学会がその存続と発展にいかに関われるかを検討するラウンドテーブルである。ここでいう平和博物館とは、戦争や差別に関する当時の状況を後世に伝える展示などの観覧を通じて、来館者に平和を創造する主体となることを期する施設を指す(安斎 2014)。戦争体験者が減少するなか、平和博物館の存在意義はより高まっている一方、歴史教育への政治の介入や安全保障政策の転換など、戦後日本の平和主義の形骸化が進む現在、平和博物館を取り巻く環境は厳しさを増している。その事実は平和学そのものの危機として受け止められるべきである。本部会は平和博物館と日本平和学会が連帯して平和を創造する主体を生み出し続けるために、平和博物館の現在と未来について議論する場としたい。※参考文献 安斎育郎(2014)「日本平和学会と平和博物館の連帯と可能性」『立命館平和研究』15巻、21-32頁。

 

登壇者:普天間朝佳(ひめゆり平和祈念資料館)

登壇者:殿平善彦(笹の墓標展示館再生実行委員会)

登壇者:渡辺美奈(アクティブ・ミュージアム 女たちの戦争と平和資料館)

登壇者:福島在行(平和のための博物館市民ネットワーク)

登壇者:山根和代(立命館大学国際平和ミュージアム)

司会:和田賢治(武蔵野学院大学)

 

11:20-12:20 昼休憩 

 ※「出張 難民移民カフェ」によるお弁当(要予約)などの販売(15時まで)

 

12:20-14:20 分科会

 

14:30-16:30 部会6(開催校企画・早稲田大学平和学研究所共催) 

※ラウンドテーブル ジェンダーの視点から改めて問い直す―「グローバルサウス」とは何か

(部会責任者 堀  芳枝 早稲田大学)

会場:14号館 101

 

 2023年5月に行われたG7広島サミットでは「グローバルサウス」が経済成長の途上で、ロシア・ウクライナ問題にも影響力を及ぼす可能性がある国々という意味で頻繁に報道された。しかし本来は「南北問題」に代わる言葉として、グローバル経済の下で市場の力が国家や社会の制度や仕組みに影響を与えるようになった結果、南と北の双方で経済成長から取り残された空間と人々を意味するはずだ。

 では、グローバルサウスの「コア」はどこにあるのか。今日の世界はさらなる資本蓄積のために、女性、移民女性、難民/マイノリティも新たな剰余価値の源泉として経済主体化し、労働市場に参加することが奨励されている。これは世界システムにとってどのような意味をもつのか。こうした問題をジェンダーの視点から「グローバルサウス」の問題として問いかけてみたい。

 

司会・問題提起:堀芳枝(早稲田大学)「途上国のサブシステンスと女性」
登壇者:巣内尚子(ジャーナリスト)「日本における技能実習生とジェンダー」

登壇者:清水奈名子(宇都宮大学)「原発被害事故を増幅させるジェンダー格差」

登壇者:工藤晴子(神戸大学)「難民とジェンダー/セクシュアリティ」