No.2

熊本博之さん



熊本さんは平和学とどのように出会いましたか?



 社会の軍事化について研究している若手研究者たちと立ち上げた研究チームのメンバーから教えてもらったのがきっかけです。「平和を学問するってどういうことだ?」と思ったことを覚えています。


 私は米軍基地が地域社会に及ぼす影響についての研究をしているのですが、ガルトゥングの「構造的暴力」を知ったとき、「これだ!」と感じました。基地被害は騒音や事件事故だけではありません。地域の社会構造を変えてしまうことも被害です。そこまでしっかり捉えることのできる概念が構造的暴力でした。このときはじめて、平和学と出会ったのだと思っています。




プロフィール:

明星大学教授。宮崎県生まれ。地域社会学や環境社会学の観点から、軍事基地が人びとの生活に及ぼす影響について分析している。調査地は沖縄で、なかでも普天間基地の移設先である名護市辺野古の集落に、20年以上通い続けている。著書に『交差する辺野古―問いなおされる自治』『辺野古入門』


現在の熊本さんにとっての平和学とはなんでしょうか?また、ご自身の研究や実践と平和学とのつながりはどのようなものでしょうか?



 私はデモ行進をしたり、座り込みに参加したりすることはほとんどありません。そのかわり、平和を損ねるような問題が起きてしまった社会的な背景について調べ、学び、問題の当事者から話をうかがったりしながら、その成果を発信しています。


 その方法は、本や論文を書いたり、新聞に記事を寄稿したり、SNSに投稿したりなど様々ですが、それが平和学の実践だと思っています。


平和学に興味がある人に伝えたいことなどがあったら教えてください。



 平和は、戦争がないことだけではありません。もちろん、いまおきている戦争をとめることは大事です。でも、それは途方もなく大変なことで、その途方もなさに無力感を覚えてしまうと、平和なんて理想だ、平和学なんて学んでも意味がない、という気持ちになるでしょう。


 でも、自分の周りでおきている「平和じゃないこと」をとめることであれば、何かできることがある気がしませんか?友だちが偏見に満ちた発言をしていたとき、そうじゃないよ、それは差別だよと言ってあげること。それだって立派な平和の実践です。少しの勇気と、学びたいという気持ちが、あなたの周りを少しずつ平和にしていくのです。