100の論点:37. 2014年7月1日の閣議決定はどのようなものでしょうか。

 安保法制の土台となっているのは「国の存立を全うし、国民を守るための切れ目のない安全保障法制の整備について」と題する2014年7月1日の閣議決定です。これは、同年5月15日の安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会(安保法制懇)の報告書を踏まえて、自民・公明党間の与党協議を経て作られました。

 全8ページからなる閣議決定は、前文で、戦後日本の平和国家としての歩みを「より確固たるものにしなければならない」としつつ、「我が国を取り巻く安全保障環境の変化に対応」する必要性を強調し、「日米同盟の抑止力を向上させる」こと、そして「積極的平和主義」を掲げています。

 本文は、3つの主要部分から成っています。

 第一の「武力攻撃に至らない侵害への対処」は、いわゆるグレーゾーン事態といわれるもので、離島防衛などの状況において自衛隊が治安出動や海上警備行動として出動できる手続きを迅速化するというものです。また、米軍を防護するための武器使用を可能にするともしています。

 第二の「国際社会の平和と安定への一層の貢献」は、米軍や多国籍軍支援、PKO活動などにおいて、自衛隊の活動範囲を拡大するものです。いわゆる後方支援と「武力行使との一体化」の考え方に変更を加え、これまで「非戦闘地域」に限るとされたところを今後は「現に戦闘行為を行っている現場」でなければ自衛隊が活動できるとしました。同時に、こうした活動での自衛隊の武器使用はこれまで自己や武器を守る「受動的」なものに限られていましたが、PKO活動においては、駆けつけ警護など任務遂行のための武器使用ができることとされました。

 第三の「憲法第9条の下で許容される自衛の措置」においては、1972年以来政府が維持してきた「集団的自衛権の行使は認められない」という政府見解を転換して、一定の条件下で集団的自衛権の行使が容認されるとしました。自衛の措置としての武力行使が許される「新三要件」を定め、日本に対する武力攻撃がなく、他国(「我が国と密接な関係にある他国」)が攻撃を受けた場合にも、「我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険がある」場合は武力行使が可能とされました。これが安保法制における「存立危機事態」という概念の基礎になっています。(川崎 哲)

 

参考資料

「国の存立を全うし、国民を守るための切れ目のない安全保障法制の整備について」(2014年7月1日、国家安全保障会議決定、閣議決定)http://www.cas.go.jp/jp/gaiyou/jimu/pdf/anpohosei.pdf

安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会報告書 2014年5月15日http://www.kantei.go.jp/jp/singi/anzenhosyou2/dai7/houkoku.pdf