100の論点:86. 世界各地にある非核兵器地帯条約およびモンゴルの「一国非核地位」について教えてください。

 非核兵器地帯とは、地域の複数の国家が条約を締結し、核兵器を生産および保有しないこと、さらに核兵器を配備させないことを約束するものです。また核兵器国は、地帯構成国に対して核兵器を使用しないことを約束します。これまで以下の5つの非核兵器地帯が設置されています。

 第1に、キューバ危機を契機として、ラテンアメリカ非核兵器地帯が1967年に設置され、第2に、フランスの核実験を契機として、南太平洋非核地帯が1985年に設置され、第3に、冷戦終結およびカンボジア内戦終結を契機に、東南アジア非核兵器地帯が1995年に設置され、第4に、冷戦終結および南アフリカの民主化を契機に、アフリカ非核兵器地帯条約が1996年に設置され、第5に、ソ連からの独立および核実験による汚染などを契機に、中央アジア非核兵器地帯が2006年に設置されました。

 これらの非核兵器地帯の設置により南半球はすべて非核兵器地帯に含まれており、また世界中では110カ国以上が非核兵器地帯に含まれています。

 核兵器国が非核兵器地帯構成国に対して核兵器を使用しないとの約束に関しては、5核兵器国すべてが、ラテンアメリカ、南太平洋、アフリカ、中央アジアの議定書に署名していますが、アメリカだけが後の三つの議定書をまだ批准していません。また東南アジアに関しては、5核兵器国と地帯構成国の協議が続けられています。

 モンゴルは1992年に一国非核兵器地帯を宣言しましたが、一国であるので非核兵器地帯とは認められず、1988年に国連総会で「非核兵器地位」を認められ、核兵器国の協力も要請されました。

 非核兵器地帯は、「核兵器がない方が平和で安全である」という考えに基づくもので、核兵器のない世界に向けての強力な推進力となっています。1970年代には、インドとパキスタン、ブラジルとアルゼンチンが潜在的核兵器国としてそれぞれ対立していました。南アジアでは現在インド・パキスタンの核軍備競争が続き、一層危険な地域となっていますが、ラテンアメリカでは、ブラジル・アルゼンチンはともに非核兵器地帯条約に加入し、平和な地域となっています。(黒澤 満)

 

参考文献

梅林宏道『非核兵器地帯』岩波書店、2011年。

黒澤満『核軍縮入門』信山社、2011年。