⑮平和と芸術

【連絡先】

 

責任者 湯浅正恵

E-mail: yuasa(a)hiroshima-cu.ac.jp

 

 21世紀に入り、世界・社会の状況がさらに混迷する中、平和創造の力をさらに蓄え強めていくために、さまざまな学問と現場とが連携しながら平和学を支えていく必要がある。そのために、平和学会の中でも比較的触れられて来なかったテーマである「芸術」要素を取り込んで、現場から学び、学問を追及していくことに、新たな道筋を模索していきたい。 

 

 日本平和学会においても、2004年には、機関誌『平和研究』第29号において芸術の視点からの平和学の可能性について特集されたし、2005年5月1~6日には、スペイン・ゲルニカにおいて開催された国際平和博物館会議でも会議のテーマは「芸術と平和」であった。また、IPRAでも、2004年のハンガリー大会にて「芸術と平和のコミッション」が誕生している。平和と芸術の関係から模索していく平和学の可能性については、国内外の関心がますます高まっていくだろうと考えられるが、日本平和学会においても当分科会の活動を通して、地道に途切れることなく研究と実践を展開していけたらと切に願っている。

 

 日本においても、世界においても、さまざまな芸術家が、社会変革のため、また、平和創造のために活躍している。さらに、芸術の分野の学問研究も進んでいる。しかし、「平和学」という学問分野の枠の中に、それらの活動・研究を捉えていくということは、まだまだ未開拓なのである。

 

 平和学が、平和研究、平和教育、そして平和活動などをつなぎ、市民が連帯し、社会・世界に代替案を発信していくものだとすれば、芸術の役割は多岐に渡って期待されよう。平和の価値の創造のために、さまざまな新しい芸術的方法を模索し、今まで蓄積されてきた研究の成果、これから展開されていくであろう活動のひとつの拠点として、分科会「平和と芸術」が果たしていけるであろう可能性は計り知れない。

 

 具体的には、美術、映像、文学、建築、写真、音楽、演劇などさまざまな分野で活躍する平和に価値を置く芸術家・芸術作品などの分析・研究を報告したり、また、それらの作品を実際に展示したり、芸術家自身によってパフォーマンスしてもらったり、平和活動・平和教育などの中に、われわれがどのように芸術活動を取り入れていけるのか探求してみたりする。また、昼休みの一個の分科会枠を超えた形で、他の分科会と企画・共働したり、懇親会などの時間枠の一部を活用できれば、学会参加者全体を巻き込んで問いかけをしてみたりと、ダイナミックな展開も視野に入れておきたい。