2008年 秋季研究集会プログラム

 

大会テーマ「共生と平和―ローカル・グローバル」

 

2008 年 11 月 22 日(土)23 日(日)

場所:名古屋学院大学 名古屋キャンパス 白鳥学舎

 

 

開催趣旨

 

 ともに生きる。共生。人々が仲良く平和に暮らす。それは理想である。しかし、現実には差別、偏見、抑圧、暴力、戦争があり、共生を阻む様々な現実がある。それでも私たちは平和学の学徒として、人々の多様な能力の実現を阻む構造的暴力の除去に努め、直接的な暴力に依拠しない共生の条件を模索しなければならないであろう。

 本研究集会においては、日本社会における在日外国人をめぐる状況と市民による国際協力=民際協力を取り上げ、共生の多様な側面を考えたい。

 在日外国人をめぐる状況に関しては、海外から日本にやってきて一定期間以上定住する人々の数が大幅に増加したのみならず、彼らの出身地域の構成は大きく変化した。そのために、在日外国人を取り巻く環境は大きな変化の中にある。そうした中でも継続する、彼ら、彼女らを取り巻く構造的暴力の現状を知る。そして、その暴力を克服するために、「共生」もしくは「多文化共生」という理念、もしくはその理念に基づく政策や活動がどの程度、有効であるのか、検証する。在日外国人に関しては部会開催に加えて、映画上映会も企画した。

 他方、世界の貧困問題や経済格差の縮小に取り組む市民運動、NGO活動においても、発展途上国、南の国の人々と「ともに生きる」社会を目指すというスローガンが見られる。では、その場合、「ともに生きる」とは何を指しているのか、そもそも、経済格差(中心―周辺関係)が厳然と存在するグローバル社会において、「共生」が成り立ちうるのか、また、成り立ちうるとすれば、どうしたら「共生」は実現できるのか、などの問題を検討する。

 なお、開催校特別企画フォーラムとして、東南アジア・フィリピンにおけるミンダナオ和平の問題を取り上げる。紛争が続くミンダナオの和平はフィリピンにおけるキリスト教徒とイスラム教徒との共存・共生という課題を突きつけている。日本とも関わりの深いフィリピン問題を検討し、平和と共生について議論を深める。

 以上のように、「共生」という概念を鍵に、今なお根強く残る日本国内の構造的暴力の現実を検証するとともに、積極的平和を実現していくための具体的な方途について議論を尽くしたい。 

 

11月22日(土)

9:30~12:30

午前の部

部会Ⅰ

「残虐兵器の廃絶と市民・NGOの役割―クラスター爆弾、劣化ウラン兵器、核兵器の全面禁止を求めて」(102教室)

司会:高橋博子(広島市立大・広島平和研究所)竹峰誠一郎(三重大)

 

報告(パネラーを兼ねる):

目加田説子(中央大)

「クラスター爆弾禁止条約の意義と今後の課題」

 

嘉指信雄(神戸大)

「劣化ウラン兵器禁止キャンペーンの現状-国連決議採択('07/12)後の展望」

 

児玉克哉(三重大)

「核廃絶に向けてのヒロシマ・ナガサキプロセスの意義と課題」

 

木村朗(鹿児島大)

「原爆神話からの解放と核抑止論の克服―戦争と核のない世界の実現するために」

 

自由論題部会(103教室)

司会:最上敏樹(国際基督教大)

 

報告:

上野友也(日本学術振興会特別研究員)

「冷戦終結以後の武力紛争と人道支援の安全性―人道支援の配分的正義をめぐる政治―」

 

清水奈名子(宇都宮大)

「国連安全保障体制と「保護する責任」―ダルフール紛争をめぐる対応を中心として―」

 

討論:山田哲也(南山大)

 

12:30~14:30

昼食 

 

12:30~14:30

分科会

 

14:40~15:10

総会(102教室)

 

15:10~18:00

午後の部 

 

開催校企画部会Ⅰ

「多文化共生と平和―地域・日本社会でともに生きるとは?」(102教室)

 

司会:増田あゆみ(名古屋学院大)

 

報告:姜裕正(在日本大韓民国民団 愛知県地方本部 事務局長・組織部長)

「多民族社会到来と在日コリアンの現状と今後」

 

報告:賽漢卓娜Saihanjuna(名城大非常勤講師)

「都市近郊農村における中国人女性の結婚移住」

 

報告:金城エジウソンセイエイ(ブラジル友の会会長)

「日系ブラジル人として」(仮)

 

報告:メアリ・アンジェリン・ダアノイ(名古屋学院大非常勤講師)

「The Corroborative Efforts of Filipinos in Creating a Multicultural Society in Aichi: A Process Documentation of KASAPI's Involvement in the Local Community」(「愛知県における多文化共生社会づくりに向けたフィリピン人による協働努力-『春日井愛知フィリピン人の会』による地域社会活動の記録」)

 

討論:羽後静子(中部大)

討論:内海愛子(早稲田大)

 

18:15~

懇親会(1階フーズバー 〔カフェテリア〕)

 

 

11月23日(日)

午前の部 9:30~12:30

開催校企画部会Ⅱ 

「民際協力と平和―地球の上でともに生きるとは?」(102教室)

司会:佐竹眞明(名古屋学院大)

 

報告:井川定一(アジア日本相互交流センター・ICAN)

「それでも、人々と「ともに」」

 

報告:藤岡美恵子(法政大非常勤講師、元・反差別国際運動《IMADR》事務局次長)

「NGOはオルタナティブ足りうるか?~「パートナーシップ」と政策提言活動をめぐって」

 

報告:大橋正明(恵泉女学園大、国際協力NGOセンター《JANIC》理事長)

「NGOのパートナーを考える―日本の国際協力NGOの到達点と課題」(仮)

 

報告:堀田正彦(オルタートレード社代表取締役)

「共生と平和を生み出すのは、“わか者、よそ者、ばか者”である」(仮)

 

討論:村井吉敬(早稲田大)

 

 

開催校企画 

「共生と平和」映画上映会(103教室)

 

10:20~10:50

『となりに生きる外国人―多文化共生って何?』

(2006年、アジア太平洋資料センターPARC製作。1990年代以降増加したニューカマー外国人について、労働、ことばと社会、教育の側面から検討。詳しくはhttp://www.parc-jp.org/video/sakuhin/tonari.html)

 

11:00~12:30

『海女のリャンさん』

(2004年、原村政樹監督 さくら映画社製作。文化庁・文化記録映画大賞受賞、同年キネマ旬報文化映画ベストテン1位。戦前、済州島より日本に渡り、戦後、朝鮮半島の分断により子どもたちと引き離されてしまった在日女性、梁義憲《リャン・イーホン》さんを描く。詳しくはhttp://www.sakuraeiga.com/ama.html) 

 

12:30~14:30

昼食 

 

12:30~14:30

分科会 

 

14:40~17:30

午後の部 

 

部会Ⅲ

「平和学と教育学の結節点をめぐって―平和教育学の可能性」(102教室)

司会:岡本三夫(広島修道大)

 

報告:藤田明史(トランセンド(平和的手段による紛争転換)研究会)

「現代平和学の課題―「平和教育学」の形成との関連において」

 

報告:竹内久顕(東京女子大)

「日本の平和教育の蓄積と課題」

 

報告:村上登司文(京都教育大)

「海外の平和教育研究の発展段階」

 

討論:舟越耿一(長崎大)

 

開催校特別企画フォーラム

Forum on Moro Women Leaders: Peace Initiatives of Women Under Armed Conflicts

(「モロ女性リーダーによるフォーラム:紛争下における女性の平和への取り組み」)(103教室)

報告:エリン・アニーシャ・カパル・グロ(ミンダナオ国立大マラゥイ校)

「ミンダナオにおける平和文化を促進するモロ女性の役割」

 

司会:小川玲子(九州大)

 

報告:アイサ・アカラル(ミンダナオ国立大ホロ校)

「スルー女性に対する戦争の影響」

 

報告:ニダ・P・ダンス(バシラン州イサベラ市市会議員)

「ミンダナオ女性の政治参加」

 

報告:マタバイ・ディアマド(フィリピン・イスラム女性協議会職員、イスラム・ビジネス・フォーラム議長)

「ミンダナオの経済復興におけるモロ女性の役割」

 

報告:シッティ・ハビバ・D・サリップ(ラナオ・バンサモロ青年リーダー)

「ミンダナオ平和構築に果たす若者の役割」

 

詩の朗読など

討論:石井正子(大阪大)