声明:『北星学園大学と非常勤講師・植村隆氏に対する脅迫事件への声明』

 私たちは平和のための研究活動に従事している日本平和学会の有志です。ここに、北星学園大学とその非常勤講師・植村隆氏の身に起こっている脅迫事件に関して私たちの考えを述べさせていただきます。

 まず、自らの主張のために暴力的な手段を用いている方々に申し上げたいことがあります。私たちはあなた方のやり方に強い悲しみを覚えます。あなた方は自分自身を貶めているのです。そのことに気づいていますか。植村氏本人はおろか、その家族まで脅し、あざけり、攻撃することは卑怯です。さらに勤務先の大学にまで矛先を向けることで、学生と教員はいわれのない不安に陥り、応対する事務職員は疲弊しています。ましてや学生を巻き添えにするなどといった脅迫は許されるものではありません。しかもそれを匿名で行うことを恥ずかしいと思わないのですか。あなた方に、人間としての誇りと恥じらいがあるのなら、これまでの全ての脅迫を撤回し、謝罪をするべきです。異論があるなら、実名で正々堂々とした形で述べてはどうでしょうか。 

 次に、この件で思わぬ攻撃を受けている北星学園大学の皆様に対し、その心労をお察しします。私たちの多くが大学で勤務しておりますので、決して他人事ではありません。北星学園大学への攻撃は私たちへの攻撃です。脅迫にさらされる不安をはじめ、警備・マスコミ・市民など多方面の対応に時間を割かれるストレスを思うと、私たちもまたつらく感じます。多様な声の板挟みになるお気持ちも理解できます。学生の安全を第一に考えるということは、学生の身を預かる大学として当然のことでしょう。それと共に、この件が「脅迫に屈する」という先例とならずに解決されることを、切に願います。不正に対し毅然とした姿勢で臨むという範を示すことは、学生への重要な教育であると信じます。

 この件が、日本軍の性奴隷制の問題(いわゆる「慰安婦」問題)と関係していることから目を背けるべきではありません。「性奴隷」とされた女性たちが、戦時中、本人の意に反して日本軍による性暴力にさらされる状況におかれたこと。戦後も苦痛の記憶と社会の偏見にさいなまれたこと。それらは「ねつ造」などではなく、紛れもない事実です。彼女たちの痛みに耳を傾けて、真摯な償いをすることは、戦後の日本社会の責任であり、それは同時にあらゆる地域においていかなる場合でも戦時性暴力が許されないことを示すために、日本が課せられた国際社会に対する責任でもあるはずです。このような性暴力が二度と繰り返されないように、若い世代に教育を行うことは、高等教育機関たる大学の責務です。

 私たちは、「誤報」問題を契機に始まった朝日新聞バッシングにみられる、異論を許さないような集団的同調圧力の強まりに強い懸念を覚えます。こうした物言えば唇寒しという風潮をさらに悪化させないためには、ただ沈黙して萎縮するのではなく、ひとり一人が勇気を出して抗議の声を上げ続けることがいま求められているのではないでしょうか。

 2014年11月15日

 

日本平和学会理事会有志一同:日本平和学会会長 佐々木寛(新潟国際情報大学)、日本平和学会事務局長 浪岡新太郎(明治学院大学)、秋林こずえ(同志社大学)、アレキサンダー・ロニー(神戸大学)、内海愛子(恵泉女学園大学名誉教授)、大橋正明(聖心女子大学)、大平剛(北九州市立大学)、奥本京子(大阪女学院大学)、小田博志(北海道大学)、我部政明(琉球大学)、勝俣誠(明治学院大学国際平和研究所客員研究員)、木戸衛一(大阪大学)、君島東彦(立命館大学)、木村朗(鹿児島大学)、佐伯奈津子(早稲田大学)、清末愛砂(室蘭工業大学)、黒田俊郎(新潟県立大学)、高橋博子(広島市立大学)、高原孝生(明治学院大学)、竹峰誠一郎(明星大学)、土佐弘之(神戸大学)、蓮井誠一郎(茨城大学)、平井朗(立教大学)、古沢希代子(東京女子大学)、堀芳枝(恵泉女学園大学)、毛利聡子(明星大学)、峯陽一(同志社大学)、山根和代(立命館大学)、阿部浩己(神奈川大学)

※一般会員 順次掲載

阿部太郎(名古屋学院大学)、安部竜一郎(立教大学)、石井正子(大阪大学)、李泳采(恵泉女学園大学)、内田みどり(和歌山大学)、大串和雄(東京大学)、大林稔(龍谷大学名誉教授)、加藤一夫(静岡福祉大学)、久保田貢(愛知県立大学)、クロス京子(立命館大学)、小林誠(お茶の水女子大学)、小松寛(日本学術振興会特別研究員)、小峰久希(北海道上川高等学校)、笹岡正俊(北海道大学)、清水耕介(龍谷大学)、竹内久顕(東京女子大学)、林博史(関東学院大学)、藤田昭彦(元新聞記者)、松島泰勝(龍谷大学)、松野明久(大阪大学)、丸山江里子(都留文科大学)、村井洋(島根県立大学)、山田康博(大阪大学)、米川正子(立教大学)、和田賢治(神戸大学・大学院)