特集投稿原稿募集について

 

 

『平和研究』第67号 (2026年11月刊行予定)

特集テーマ:「分断する世界における平和学の役割」 

 

 1990年代初頭、ソ連崩壊によって東西冷戦が終結すると、世界は平和と協調への期待に包まれた。米ソ対立に基づく世界の「分断」が消滅し、「歴史の終わり」や「新世界秩序」の到来が謳われたからである。各国は「協調的安全保障」を標榜し、国連を中心とした多国間協調や国境を越えたNGO・市民社会の連帯によって、「平和の配当」の普遍化や人間の安全保障も可能になるとの期待が広がった。

 しかし、30 年余を経た今日、こうした期待を裏切るかのように、世界は多層的な「分断」に直面している。まず国際政治の場では、冷戦後にいったん後退した国家間の対立が 再燃しつつある。中国の急速な経済・軍事力の台頭は、かつて唯一の超大国となったアメリカの地位を相対化し、両国間の競争を激化させている。両国が進める経済的・戦略的ディカップリングは、米中対立を軸に据えた新たな世界の分断を生み出している。加えて、G7を中心とする西側諸国の優位性が、中国およびグローバル・サウスの台頭によって相対的に低下し、国際社会の構造を変化させている。こうした構造の下で勃発したウクライナ戦争やガザ戦争は、国家間の分断を鮮明にした。ウクライナ戦争では、西側諸国が対ロシア制裁とウクライナ支援で結束した一方、中国はロシアを事実上支援し、グローバル・サウスの多くの国は「中立」の立場を取るなど、国際社会の足並みは乱れた。ガザ戦争においても、アメリカや西欧主要国はイスラエル支持を明確にしたが、多くのアラブ・イスラム諸国や新興国はパレスチナ住民の人権擁護を強く訴えて即時停戦を求めるなど、ここでも世界の分断は鮮明になった。

 周知のように、2025年1月にはトランプ氏がアメリカ大統領に返り咲いた。彼は、第一次政権の時から、「アメリカ第一」のスローガンを掲げ、多国間協調に背を向け、中国のみならず西側同盟国との間でも分断を深めた指導者である。トランプ第二次政権下では、国家間の分断がさらに進むおそれがある。

 他方で、世界で進む「分断」は、国際政治の場に限られたものではない。国内や社会の次元においても、「異質な他者」との間で分断を図る動きが拡大している。それを体現するのもトランプ大統領である。だが、すでに第一次・第二次トランプ政権の登場以前から、多くの先進諸国で一部の移民や難民に対する排外主義的な政策が支持される風潮が強まっていた。こうした政策や言説は多くの場合、一部の人々を非-市民化/非-人間化して国境外へと排除することによって国境内の調和や繁栄、そこに本来住む権利があるとされる人々の自由や権益を取り戻そうとする「共生のための排除」の論理を内包している。だが実際には、国境での排外主義はさまざまなかたちで国内に波及していく。その結果、移民・難民以外の様々なマイノリティの人々だけではなく、排外主義によって守られるはずだったマジョリティの人々ですらしばしば排除の対象とされ、国内の分断が助長されることになる。

 それゆえ「分断する世界」を考察するには、国際政治や国家の政策といったグローバル/ナショナルな「世界」を大所高所から見るだけではなく、人々の生きる日常生活「世界」のリアリティから出発し、そこから視野を広げていくことも欠かせない。本特集では、異なった視座からの考察を結集して今日の世界における分断の諸相を明らかにするとともに、ひとつの視座からだけでは見えにくい、この分断を乗り越えていく道を模索してみたい。それもまた、さまざまな学問領域によって構成される平和学のなしえる役割のひとつなのではないだろうか。

 

第67号ゲストエディター

草野大希・塩原良和

 

1 投稿資格

投稿資格を有するのは、平和学会の会員、もしくは投稿申込以前に入会申込書が平和学会事務局に受理されている方です。なお会員に広く執筆機会を提供するために、投稿を希望する号より前の3号に原稿が掲載されている会員については、投稿資格は認められません。

 

2 原稿の種類

投稿原稿の種類には、平和研究に関する研究論文、研究ノート、書評論文の3種類があります。詳細については執筆要領をご確認ください。応募された投稿原稿が多数となった場合には、研究論文の掲載を研究ノート、書評論文より優先することがあります。また研究論文として投稿された場合であっても、査読の結果、研究ノートとして掲載を認める場合があります。なお、投稿原稿は未発表のものでなければならず、同一の原稿を学会誌以外に同時に投稿することはできません。平和学会の研究大会・集会時に提出をしたフルペーパーは、未発表原稿として扱います。

 

3 投稿申込締切と投稿原稿提出締切

投稿申込締切は2025年11月10日、投稿原稿提出締切は2026年1月10日です。

 

4 投稿申込

投稿申込締切日までに、投稿原稿の要旨と執筆者情報を所定の書式(書式1書式2)で提出してください。

 

5 原稿の投稿

投稿に際しては、刊行・編集規程投稿規程執筆要領を確認のうえ、これらの規定に則って原稿の執筆と投稿を行ってください。これらの規定に定められた要件を満たしていない原稿は、受け付けることができませんのでご注意ください。

 

6 投稿申込・原稿送付の連絡先

メールで下記のアドレス宛にご連絡ください。

psaj26journal(a)gmail.com  ((a)は@におきかえてください)

第26期編集委員会 下谷内奈緒宛

メール送信後1週間以内に受信確認の返信がない場合には、再度ご連絡ください。

 

7 査読結果の通知

原則として投稿後3カ月以内に査読結果を通知します。

 

8 オンライン・ジャーナルへの掲載

完成した原稿からオンライン上で逐次刊行となります。原則として掲載可となった原稿は、投稿から1年以内の刊行を予定しています。