2015年7月19日(広島大学)ヒロシマをめぐる<コンフリクト>

日本平和学会 春季研究大会 @広島大学/アステールプラザ

 

平和教育プロジェクト委員会

 

 

 

 広島大会において、当委員会では、「ヒロシマをめぐる<コンフリクト>」と題したワークショップを、2日目の12:10〜14:10に開催することができた。ご尽力くださったみなさんに、特に広島の地で平和教育等の活動をされているみなさんには、広報からずっとお世話になった。深く感謝したい。

 

今回のワークショップでは、平和教育や被ばく体験の継承をめぐる過渡期ともいわれる現在の広島において、「ヒロシマ」をめぐるさまざまな課題の顕現に取り組んだ。地域性、期待の温度差、世代間の理解・知識の差、広島の内と外の差、教育現場におけるジレンマ、学校と行政の協力・せめぎ合いなどの<コンフリクト>すなわち、葛藤・対立・紛争を積極的に扱う企画であった。また、ワークショップの時空間を通して、平和を創造しようとする個人・団体どうしの交流を推進し、地元の教師・活動家・市民の思いを共有し、相互にケアできる場にしたいと考えた。

 

ワークショップでは、アクション付きの自己紹介から始まり、まず、「コンフリクト」という概念とは何かを人間彫刻の手法を用いて理解・感じとる作業をする。次に、「わたしと“ヒロシマ”」の多面的な距離感を可視化するワークにより、手と感性を使いながら感じていく。徐々に出現するイメージや概念を、ときどきに共有しあう。さらに、3人1組になり、1人がアーティスト、2人が粘土となり、人間彫刻の作業を続けながら、「ヒロシマ彫刻美術館」を開催、相互に鑑賞する。この作業では、今ここにあるテーマを顕在化していき、作品にタイトルを付け、語り合う。大きな円に戻り全体で共有した後、次に、2つのグループが一緒になり6人のグループを構成、「ヒロシマ」「平和」「平和教育」等の出現してきたイメージをめぐりコンフリクト分析(ブレーンストーミング)を行う。時間の制限のために全体共有を十分に果たせなかったが、全体の身体を用いて一つの動く彫刻作品「ヒロシマ・ピース・生き物」を共同創作し、最後に、「わたしと“ヒロシマ”」の作業を行った模造紙のところに再集合、この時点での距離感を視覚化し、少し言葉で共有し、ワークショップを終えた。

 

 ワークショップを進めるにあたり、1.コンフリクト分析(マッピング)の手法、2.表現芸術セラピーの手法、3.紛争転換の手法の3種類の少しずつを、組み合わせて用いた。ファシリテーターは、ロニー・アレキサンダー、笠井綾(新会員)、奥本京子であった。2時間といった制限の中でのワークであったため、最終的に顕現したコンフリクトの数々を丁寧に扱い、紛争解決の糸口を見つける、というところまでは到達しなかった。これは、次回以降の課題となるが、ワークショップの時間を3時間あるいは、半日といった、長い時間を確保して企画することが現実的であるかどうか、検討を要するであろう。

 

 ワークショップには、30人以上の参加者を得ることができた。うち、数名は学会会員、その他はすべて地元他からの市民参加者であった。ただ、途中で参加しようとした人が何人かいたようだったが、会場の多目的スタジオを覗くと、すでに参加者のうちに親密な雰囲気が流れていたようで、遠慮された人もいたと聞く。大変、申し訳なく思う。また、子ども連れを歓迎し、WS自体にも参加してもらえる環境を整えたつもりであったが、実際には子どもの参加者はいなかった。今後も、多様な世代を歓迎する形態の模索を続けていきたい。

 

今回のワークショップが実現したのは、次の流れに依拠するものだった。まず、2015年3月5日に、広島市東区民文化センター中会議室にて、交流会(講演会)を実施いただいたことから始まった。「紛争解決の様々な方法:平和構築トレーニングプログラムから」と称し、奥本京子が話をさせてもらう場を、平和教育地球キャンペーン中四国支部の赤松 敦子さんと角崎祐美さんによって設定していただいた。次に、平和教育地球キャンペーン中四国支部にはまた、2015年5月17日に、広島市東区民文化センター スタジオ2にて、表現芸術セラピーの手法を用いたワークショップを、ファシリテーターを笠井綾さんとして、「芸術を通しての平和教育ワークショップ Book of Peace〜自分の「平和絵本」を作ろう〜」と題し、企画いただいた。これには、平和教育プロジェクト委員会が後援をさせていただいた。また、今回の学会大会の当委員会主催のワークショップでは、平和教育地球キャンペーン中四国支部をはじめとして、つながりを求めて下さる団体に後援・協力を呼び掛けたところ、NPO法人ART Peace、地球市民共育塾ひろしまの、合計3団体が後援を引き受けてくださった。今回いただいた出会いを大切に、今後もまたネットワーキングを続けていきたい。最後に、この他、企画委員会、平和教育や平和と芸術などの分科会、事務局、広報委員会等、学会内で横に連携することができ、感謝したい。

 

 第21期 平和教育プロジェクト委員長

 

 奥 本 京 子