2019年6月22日(福島大学)トレーナーズトレーニング やり⇔とり力を育てる:キーワードから考える当事者性

ファシリテーター:奥本京子、笠井綾、高部優子、暉峻僚三、中原澪佳、松井ケティ、ロニー・アレキサンダー

リサーチャー:鈴木晶、堀芳枝、山根和代

 

東京電力福島第一原子力発電所の事故は、私たちが原発問題についての当事者として立たざるを得ない現実を生み出した。にもかかわらず、教育現場で、そのことを考える機会は稀で、関連する報道も少なくなっている。様々な問題が、人々が、置き去りにされ、不可視化されている。

平和教育プロジェクト委員会 23 期では、“やりとりする力を鍛える”ということを大テーマとしている。今回は、当事者性をテーマとして、いくつかのキーワードから福島で起きていることに対して、自分はどんな当事者かを考え、表現し、語り交わす機会を作ろうと体を使ったワークショップを試みた。

 

【アイスブレーキング「どの水がおいしそう?」】(20 分)

1.水が入っている 6 種類のラベルのない形状が異なるペットボトルや瓶を並べる。

2.グループに分かれ、どの水が一番美味しそうか決めて、理由とともに発表。

3.ファシリテーターから、6 種類の水は、①福島の水、②地蔵の水(水俣)、③東京水(土産物)、④普天間の湧き水、⑤14 年目の保存水、⑥アラスカの氷河だと説明。グループで再び、どの水を選ぶか決め、発表。

このアイスブレーキングの意図は、自分の主観と社会とのつながりの気づきである。

 

【キーワードから考える当事者性―体を使ったワークショップ】(60 分)

○全員が、いまの気持ちをキーワードにして黒板に書く。

○全員で丸くなる。自分の名前を発すると同時に動きをつける。他の人は、それと同じ動きをするミラーリングを行う。1 周した後、次は何か音を出しながら動く。他の人はミラーリングを行う。考えないで体を動かすことに慣れる。

○自由に教室内を歩く。ファシリテーターが黒板に書かれたキーワードを 1 つ選び、参加者は止まって、そのキーワードからイメージしたポーズを作る。

○今の気持ちを体で表現する(How are you?と聞かれたら、体でどう答えるか)。10 カウントしたら、反対の気持ちをポージング。その後、10 の数える内に元の形に戻る。次は、7カウントで行い、次は 5、次は 3、最後は 1 でポージング。ペアになって、自分のポージングを説明したり、どう感じたか話す。それを全体に共有。

●原発事故当時の自分(気持ち、スタンス、関わり、距離感など)を体で表現する。3 分考え、10 カウントでポージング。ペアで、どういうポーズなのかシェアする。次に 20 カウントの間で、現在の自分を体で表現する。それをペアでシェアする。

●教室の端に全員、1 列に横に並び、まずは現在の自分を体で表現する。そして教室の反対側に向かって歩きながら、20 秒で原発事故当時の自分のポージングに戻る。さらに 20 秒で原発事故当時の自分のポージングから、現在の自分のポージングに歩きながら戻る。次は 10 秒で行き来する。動いてみて気づいたことを、しっかりと小グループで話しあう。

いくつかを全体で共有する。

●4~6人のグループで、原発事故当時の“あの時”のイメージをポージング→(20 秒動いて)→いまをポージング→(20 秒動いて)→その先の未来をポージング。グループで話、全体でシェア。

 

【まとめのグループワーク:行動できる市民を育てる】(40 分)

様々な知識を持っている参加者が、感性に働きかけるワークを行ったので、まとめとして、今後の行動について考えるグループワークを行った。どのような未来に住みたいかを考え、現実と理想の未来のギャップをどのように埋めていくのかのアクションプランを考え、全体で共有した。

今回は、身体による表現に慣れていない参加者がほとんどだったが、面白かった、新鮮だった、言葉を使うことによる凝り固まった“定型”を壊せる、など肯定的な意見も多かった。

しかし、違和感を持った参加者もおり、テーマ設定やワークショップのプロセス、ファシリテーターのコミュニケーションや態度など、考えるべき点も浮き彫りになった。

また今回から、調査者と実践者が互いに協働し、実践と評価を繰り返すアクション・リサーチを導入した。最初に参加者にアクション・リサーチの説明を行い、アンケートなどの協力や公表についての同意を得た。参加者からのアンケート、また平和教育プロジェクト委員からのアンケートは可能な限り、平和学会の平和教育プロジェクト委員会のサイトで公表する。今後は参加者、委員のアンケートを分析し、それを 2019 年秋のワークショップにつなげていこうと考えている。