2022年 春季研究集会プログラム

 

大会テーマ「自然と人間の関係性を考える

 

2022年 6月18日(土)・19日(日)

会場:東京農業大学 (北海道オホーツクキャンパス)

対面+オンラインのハイブリッドで開催します。ただし、新型コロナウィルス感染状況次第では、オンラインのみによる開催となる可能性があります。

 

開催趣旨

 

 人間と自然の「共生」が大切であることはいうまでもない。しかしながら、どのようにして、人間と自然は共生できるのだろうか。また、人間と自然のあいだには、どのような「暴力」が存在しているのだろうか。そもそも、共生とはいったい何であろうか。これらの問いに応答するためには、まず、人間と自然の関係性がいかなるものかを深く検討する必要がある。そこで、本研究大会では、「日本平和学会は、人間と自然の関係性について、どのような学術知を提供することができるのか」という、大きな問いを立ててみたい。

 人間は自然が存在しなければ生きていけない。けれども、自然は人間が存在しなくても生きている(もしかしたら、自然からすれば、人間が存在しないほうがよいのかもしれない)。すなわち、人間と自然の関係には、自然の優位性という特徴を見出せる。この点について、たとえば、アジア経済史やグローバル・ヒストリーを専門とする杉原薫は、共編著『地球圏・生命圏・人間圏―持続的な生存基盤を求めて』(京都大学学術出版会、2010年)のなかで、「地球圏」(約46億年前に誕生した地圏・土壌圏・水圏・大気圏など)、「生命圏」(40億年前に誕生した生産者(植物)・消費者(動物)・分解者(バクテリアなど)からなる生態系)、「人間圏」(20万年前に誕生した人類社会)という3つの概念を提示しながら、人間圏の持続性は地球圏と生命圏の持続に強く依存している、と指摘する。人間と自然の関係には、自然の優位性だけでなく、序列性という歴史的特徴も見出すことができるのだ。もしこの優位性と序列性を重んじるのであれば、人間圏を持続するためには脱人間中心主義の思考が求められている、といえよう。

 はたして平和学は、人間と自然の関係性をどのように描くことができるのだろうか。また、平和学の先達は、人間と自然の関係性をどのように捉えてきたのであろうか。オホーツク地域という北海道の大自然のなかで、「気候変動と21世紀の平和プロジェクト」と連携しながら考えていきたい。

 

開催校責任者・第24期企画委員長 佐藤 史郎  

 

 

6月18日(土)

 

9:00-11:00 部会1 (気候変動と21世紀の平和プロジェクト企画)

現代農業食料システムの暴力性とその先へ

 

 近年の気候危機を考える上で、ヒトが他のヒトや自然、ひいては地球にかけている暴力と呼ぶにふさわしい負荷の問題に向き合わなければならない。それはしばしば資本主義の問題として論じられることがあるが、ヒトが「食べる」ことを可能にする行為に関わる様々な暴力の問題としてはこれまで十分に掘り下げられてはこなかった。「食」はヒトが命を繋ぐためには避けて通れないテーマであるが、あまりにも身近すぎてその行為に伴う様々な「意味」、「問題」、「可能性」などについて学術的には議論が不十分なフロンティア分野の一つである。このことは、平和学においても当てはまる。なぜなら、「食べる」という行為は一見、一人で行うことできる活動のように見えるが、実際のところ、様々な「他者」が絡み合うことで成り立つものだからである。ここでの「他者」には様々な具体例が入りうるだろう。こうした「他者」との向き合い方についてこれまで真剣に考えてきた平和学である以上、本テ―マが射程に入ってくることは言うまでもない。当部会では、この「食」というテーマを糸口として近代というシステムが孕むそもそもの問題と、さらにはその先の未来について、じっくりと考える機会としたい。

 

 

報告:平賀緑(京都橘大学)

       「資本主義的食料システムにおける人と自然への暴力性を考える」

報告:山本奈美(京都大学大学院)

       「持続可能な食農システム構築に向けたオルタナティブフードネットワークの到達点と課題~食の正義のアプローチから~」

報告:中野佳裕(立教大学)

       「食と脱成長:〈緑の経済成長〉パラダイムはいかにして克服可能か?」

討論:古沢広祐(国学院大学)

討論:ロニー・アレキサンダー(神戸大学)

司会兼討論:原田太津男(龍谷大学)

 

 

 

 

9:00-11:00 部会2(自由論題)

 

報告:高小超(明治学院大学大学院)

       「旧日本軍中国遺棄化学兵器被害者たちへの救済可能性―在外被爆者の救済を手がかりに」

報告:吉井美知子(沖縄大学)

       「先住民族と迷惑施設に関する研究―アイヌの人々は「核のごみ施設」立地計画をどう思うのか―」

討論:窪誠(大阪産業大学)

討論:上村英明(市民外交センター)

司会:木村真希子(津田塾大学)    

 

 

11:00-12:00 昼休み

 

12:00-14:00 分科会

 

14:05-15:20 総会

*「第8回平和賞・平和研究奨励賞の授賞式」を行います

 

 

15:30-17:30 部会3 (第8回平和研究奨励賞記念部会、「3・11」プロジェクト企画との共催企画)

「被災後の社会を生き抜く―亀裂と分断に抵抗する平和学」

 

 「3・11」から10年が過ぎ、各地では発災以前の状態への揺れ戻しが進む。国会や首相官邸前での大規模なデモは見えなくなり、避難した人びとは徐々に地域に戻りつつあり、厳しく検査されていた食品はその対象を減らしている。原発が徐々に再稼働へ準備を重ねる一方で、被災地では歪んだ橋の欄干や少し突き出したマンホール、傾いたりへこんだ道路が小さな震災遺構となっている。茨城や栃木や宮城などの低認知被災地では林の中や常緑樹の根元では今も不自然な線量を測定できるだろう。災厄がもたらした変化はまだ残っている。

 発災後は「復旧」と「復興」が同時進行してきた。その大きな流れの中で、自らの平和だった暮らしや地域や自然を取り戻そうとして、また再発防止を願い加害責任を明らかにするために抗う人びとがいる。これも変化のひとつだ。災害によってもたらされた制御不能なものごとが明らかにした、私たちの社会がもつシステムの暴力性と被害の不可逆性は、人びとに不信感や絶望感をもたらした。それでもある人びとは、そこに意味を見いだして希望につなぐために抵抗してきた。

 平和学は、そういった被害者に「寄り添う」ことを考えてきた。抵抗を支援し、人びとの希望の実現を共に目指そうとしてきた。だが少なくとも「3.11」に限るなら、東電の対応や政府のエネルギー基本計画などを考慮すれば、その抵抗と支援は目指した地点にはほど遠くみえる。それでも続けるべき抵抗にはどんな意義があるのか、そして変わろうとしないシステムへの抵抗の向こう側に、私たちはどんな社会を構想するのか。研究者、当事者といった立場を超えた登壇者たちの対話からその糸口を探る。

 

〔第1部〕

報告:田村あずみ(滋賀大学・第8回平和研究奨励賞受賞者)

       「原発と〈引き裂かれた身体〉―「人間への絶望」を越えた連帯と抵抗の知」

報告:武藤類子(ひだんれん共同代表) 

       「原発事故から11年、福島の現在とこれから―地球はあらゆる命の住処―」

 

〔第2部〕ラウンドテーブル

討論:石原明子(熊本大学)

総合司会:藍原寛子(Japan Perspective News

 

 

6月19日(日)

 

 

9:00-11:00 部会4(第24期企画委員会企画) 

国を問う民衆の運動と思想―生活者たちが残した〈遺産〉に向き合う

 

 本部会の目的は、戦後日本における民衆の運動に光を当て、その現代的意味―遺産と課題―について考えることにある。

 戦後の日本社会では、大小さまざまな社会運動が起きた。憲法、戦争、核兵器、基地、日米安保、労働、教育、開発主義、公害、原発など、社会運動が取りあげた課題は多種多様である。働きかけによって問題が解決されたものもあれば、十分な解決をみないままに下火となってしまった運動もあろう。だが、たとえ望み通りの〈成果〉を達成できなかったとしても、その運動は何も残さなかったわけではない。

 本部会では、過去の/過去に最盛期を迎えた社会運動、とりわけ住民運動に代表される、生活者たちの運動に焦点を当てる。国家や行政の施策などによって〈くらし〉や〈からだ〉〈こころ〉に影響を受けた人びとやコミュニティが「なぜこのような目に遭わなくてはならないのか」と憤り、自らの被害に向き合い、互いに議論し、自らを脅かすものに対して声をあげ、あらがう。この過程の中で表された想いや論理は、たとえその運動が過去のものとなったとしても、一つの思想として時を超え、場所を超えて意義をもつように思われる。過去の/過去に最盛期を迎えた社会運動は、私たちに何を残したのか。私たちは、これらの運動から何を学び、継承していくべきなのか。そこで残された課題はどのように現在につながっているのか。このような関心をもとに、本部会は、それぞれの運動の今日的な意義や課題を考えたい。

 報告者は、あえて若手・中堅の研究者とする。自らが研究の世界に足を踏み入れたとき、その社会運動はすでに過去のものとなっていたり、最盛期を過ぎてしまっていたりする世代である。自らの研究対象が、ややもすると過去の出来事として扱われてしまう中で、彼・彼女たちはそこにどのような意義を見出してきたのか。これらの研究者が抱える問題関心や問いは、生活者たちが残した遺産を検討することにつながっているように思われる。

 

報告:秋山道宏(沖縄国際大学)

       「基地社会・沖縄の生活と生命をめぐる運動―日本復帰50年の地点から考える」

報告:友澤悠季(長崎大学)

       「公害をめぐる運動がひらいた視界と現在までの課題」

報告:八木良広(昭和女子大学)

       「『原爆被害者』運動とその思想」

討論:大野光明(滋賀県立大学)

討論:山本昭宏(神戸市外国語大学)

司会:根本雅也(松山大学)

 

 

9:00-11:00 部会5(学会50周年プレ企画第1弾)

平和学における平和教育―平和教育の“内”と“外”とを繋ぐ

 

 日本平和学会において、平和教育プロジェクト委員会が、2014年、佐々木第21期会長のもとに立ち上げられた。以来、4期8年の間、学会開催時に、小中高の教師などを含めた学会参加者を対象とし、具体的・実践的な平和教育に関するワークショップの提供を行ってきた。直接的暴力、構造的暴力、文化的暴力に晒されている、あるいは加担している自らや他者を発見し、対話に基づいて、他者や社会関係から学び、平和を創造する具体的な紛争解決の方法を学んだり、独創的な発想の訓練をしてきた。

 そのまとめとして、2021年12月に、『平和創造のための新たな平和教育――平和学アプローチによる理論と実践』が日本平和学会50周年プレ企画の一環として出版された(リンク:https://www.psaj.org/about-psaj/committees/edu-project/)。

 三者三様の書評の報告を受け、平和学における平和教育とはどのようなものか、教育によりどのように平和を創っていくか、平和教育という限られた領域、研究をどのように“外”とを繋いでいくか、すなわち平和教育プロジェクト委員会の理論と実践という学会の知の共有はどのようになされることが可能なのかを議論していきたい。

 

報告:片岡徹(北星学園大学)

報告:前田輪音(北海道教育大学)

報告:杉田明宏(大東文化大学・「平和教育」分科会責任者)

討論:佐伯奈津子(名古屋学院大学・「植民地主義と平和」分科会責任者)

討論:佐々木寛(新潟国際情報大学)

司会兼討論:湯浅正恵(広島市立大学・「平和と芸術」分科会責任者)

司会:阿知良洋平(室蘭工業大学)

 

 

11:00-12:00 昼休み

 

 

 

12:00-17:00 エクスカーション「大自然を/に学ぶ」(開催校企画)

 

 大会会場が位置するオホーツク地域は、世界遺産の知床をはじめ、サロマ湖、屈斜路湖、硫黄山、斜里岳といったように、豊かな自然環境に恵まれている。冬の時期には流氷が訪れ、オホーツク海に氷原が広がる。また、キタキツネ、ヒグマ、エゾシカ、オオワシ、オジロワシといった多くの野生動物が生息している。この大自然のなかで、人間と自然の関係性を肌で感じたい。具体的には、能取岬・天都山・小清水原生花園・東京農業大学寒冷地農場などを訪れることで、大自然「を」学ぶとともに、大自然「に」人間のあり方を学ぶ。

 

 12:00-14:00 分科会 *オンライン開催